石の祭神
むかし、三本松の浜に伝六という漁師が住んでいて、毎日沖へ出て、漁をしていました。ある日、網を上げたところ、網の中に魚といっしょに石がのっていました。伝六は石を取って海に投げ込みましたが、その次に網を上げたときも、また同じようにさっきの石がはいっていました。伝六はおかしなことがあるものだと、その石を再び海へ投げ込み、魚をしまつして網をいれました。しばらくして引き上げると、こんどもまた、さきほどの石がかかってきました。
同じ石が二度も三度も網にかかったので、伝六はふしぎに思いました。これにはなにかわけがありそうな気がしました。潮の流れも変わってきたので、伝六は浜へ引き上げました。甚六さんに魚を渡してから、その足で芦尾のうらないのじょうずな老人の所へ行き、石を見せてわけを話しました。その石を手にとってしばらく考えていた老人は、
「これは神石じゃ。おまえが正直に、まじめに働いているので、神さまがおまえにこの石をくださったのだ。さっそくおまつりしなさい。福徳がさずかるだろう」
といいました。
伝六は、わずかの空地に石の台を置いて祭壇をつくり、その上に神石を置いて、毎日拝みました。それからの伝六の漁は、ふしぎなくらい成績がよく、だれよりも多く魚をとるようになりました。
ある年のこと、この浜の町に悪い病気がはやりました。浜の人たちは、伝六がまつっている神石をみこしにしてかつぎ廻り、お祭りをしますと、ふしぎなことに病気の流行がやまってしまいました。
こんなことがあってから、浜の有志の人が集まってお堂を建て、その神石をていねいにおまつりしました。それが、今の三本松のえびす神社のはじまりだということです。(昭和37年6月)